北アルプス後立山連峰の爺ガ岳に東尾根から登りました。爺ガ岳は名峰ひしめく後立山連峰では少し目立たない山ですが、単独で比べてみてもいい山です。白馬岳・五竜岳・鹿島槍ヶ岳などに隠れて少し地味に思えますが、積雪期においては南尾根・東尾根という初中級向きの好ルートから、北稜などの困難なルートを持っています。北面はヒマラヤ襞を張り巡らせて鹿島槍の北壁と並んで印象深い姿です。
深夜の高速を車で走って登山口の鹿島に着いたのは早朝4時前。駐車スペースに車は1台もなく、トレースはあてに出来そうもない。ゆっくり支度をしてから5時に出発。鹿島山荘の庭先を通り石碑を見て緩く進み、堰堤の右側から急登にはいる。この急登、標高差にしておよそ300mを一気に上がる。冬専用ルートのため道ははっきりしないところもあるが、赤布があるし、今回は雪が付いていてトレース痕が分かったので助かった。
3ヶ月ぶりの大きな山のため、かなり苦しむのを覚悟していたが、1250mの尾根上まで何とか1時間少々で登ることが出来た。
尾根上に出てからは雪も増えてきて少し傾斜が落ちてくるが、1476mのジャンクションピーク(JP)手前は急登。雪は大体足首くらいまでもぐるが吹きだまりでは膝ぐらいまで。樹間に爺ガ岳が見え隠れする。右手に雪庇が出た尾根を進み、やがてまた急登して1767mJPに出る。ここで一気に眺望が開けて爺ガ岳中央峰・北峰を初め鹿島槍や頸城の山々が見える。
計画ではこの先のP3にBCを設けて明日アタックするつもりだったが、今日一日は天気が持ちそうなので、ここにメインザックをデポして、今日山頂アタックに向かうことにする。
右手に雪庇が出た雪稜を辿って少し急登するとP3。東尾根はポイントになるピークに出る直前は必ず急登になっている。途中で2張りのテントがあった。大学山岳部だろうか。ここからトレースもはっきりついている。少しずつ痩せてきた雪稜を辿りかなり急な雪壁に近い登りでP2。P3から1時間。このあたりでガスが出始める。
いよいよここからが東尾根の核心部。気を引き締めてナイフリッジを進む。風がそう強くなく、雪質もまあまあなので慎重に進めば特に困難ではない。痩せてギャップを上下するところにはフィックスロープが張ってある。たぶんテントのパーティのものだろう。P1の矢沢の頭への最後の登りは100m以上の急登。このあたりから疲れが出てきている上に、雪が緩んできて歩きづらい。状況が悪いと雪崩も警戒する箇所だ。登りの最後で下山してきた5人パーティにすれ違う。
矢沢の頭に出ると風が強く当たる。南には黒々した槍ヶ岳の穂先が見えるがガスが湧いていて景観は閉ざされがち。傾斜が落ちた尾根上を進むが雪が深くトレースを辿っても落ち込むと膝以上になる。ワカンも持っているのだが、ぎりぎり使わない判断で進む。2600mあたりから疲れが出てきてスピードが上がらない。このあたりから100m以上の登りはけっこうの急登で雪面は最後になってクラストしてくる。
南峰の高さを越えてもうひと登りでようやく爺ガ岳中央峰についた。13時半。ガスで南の眺望は閉ざされてしまったが、黒部の谷越しに剱岳と立山が見える。北には鹿島槍が双児峰を品よく並べている。
風の当たらない信州側で休憩して、14時前、下山にかかる。P1までのもぐる雪は足を取られて下りでもそうスピードが上がらない。P1で、P2までの区間気を抜かないように気持ちを引き締めて下りに入る。急斜面を下り、痩せ尾根を上下する。やはりフィックスロープは撤去されていた。P2からの急な下りも気をつけて下りる。夕方になってきて少し雪が締まってきたらしい。最後JPまでの緩い登りにスピードが出ない。ようやくJPにたどり着いたのは16時で、スピードが上がらない中、山頂から2時間で下りられたのかと感心。JPとその手前には今日入山したパーティがテントを張っていた。設営跡のスペースを補修して手早くテントを張る。テントの前から登ってきた爺ガ岳や鹿島槍を見ながら飲むコーヒーはおいしかった。